こんにちは、樋口です。書き込みありがとうございます。
卒論・修論に関しては、指導教員の先生に教えを請われることが、もっとも大
切かと存じます。私がここで何を書いていようと、指導の責任を負われ、最終
的に採点なさるのは指導教員の先生でいらっしゃるからです。
その上で、議論構造ということでしたら富田英司先生の論文を一通りお読みに
なると良さそうです。
http://khc.sourceforge.net/bib.html?year=all&auth=all&key=%E5%AF%8C%E7%94%B0%E8%8B%B1%E5%8F%B8
また、共起ネットワークについてはこちらの論文もご参考になるやもしれませ
ん。
福井美弥・阿部浩和 2013 「異なる文体における共起ネットワーク図の図
的解釈」 『図学研究』 47(4): 3-9
議論構造というテーマは私の専門外になりますが、強いてコメントするならば、
川端亮先生の「真如苑における霊位向上」が参考になるように思います。
http://keisya.hus.osaka-u.ac.jp/kawabata/2/HiTei213.pdf
「初心者」の段階では、「家族・親戚」と言えば「感謝」のように、ごく基本
的な概念間のつながり(共起)しか見られません(図1)。ところが教えにつ
いての学習が進むと、基本的なつながりに加えて、応用的・発展的なつながり
が出てきて、共起ネットワークが複雑化していきます(図2・図3)。
これらの分析結果を見ると、共起関係(線)が多いということは、議論の複雑
性の高さを示しているようです。
しかし、注意が必要な点もあります。第一に、以上のような比較を行なうため
には、同じコーディングルールを適用することで、同じコードを各データから
取り出す必要があるでしょう。語の共起ネットワークでは、別々の語が各デー
タから抽出されることが考えられます。その結果として、分析に使う語が異な
っている場合は、共起の数だけで比較を行なうことは難しいでしょう。たとえ
ばデータ中に「階層クラスター分析」という文字列が何度も出現していれば、
「階層」「クラスター」「分析」の共起関係と見なされるでしょう。このよう
に共起と認識されやすい語群もあれば、そうでない語群もあるだろうからです。
第二に、密度ではなく、単純な共起の数で比較する必要があるでしょう。KH Coder
の場合、共起関係を持たない語やコードは描画されません。そして密度の計算
からも省かれます。密度を使いたい場合には、共起関係を持たないコードも含
めて計算を行なう必要があるでしょう。そうしないと、共起関係を1つも持た
ないコードがたくさんあった方が、密度が高い、複雑性が高いという結果に
なってしまいます。ご自身で密度を計算するか、単に共起の数を使うかでしょ
う。
第三に、密度や共起の数だけでなく、実際の共起ネットワークを見比べる必要
がありそうです。上に挙げた川端亮先生の論文のように、どんな共起が増えて、
どのように複雑化したのかを確認しておくのが確実でしょう。